【インタビュー】実際に働いて感じた期間工の働きがいと苦労

理学療法士として働かれているミササギさんは「現場で働いている方についてもっと知りたい」というお考えから、期間工として働いていたという経験があります。期間工の現場を実際に体験したことで、体の使い方やリハビリ方法などについて、より具体的なアドバイスができるようになったそうです。
今回はそんなミササギさんに、期間工として働いていたときの生活の様子や大変だったこと、また2年間続けられた理由などをお伺いしました。
「期間工は大変と聞くが、実際どうなんだろうか……」と気になっている方は、ぜひご覧ください。
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PROFILE:ミササギさん(30代・男性) |
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現在は理学療法士として従事中。産業保健の領域に関する知見を深めるべく、トヨタ自動車の工場の期間工として2年間働いていた。 |
理学療法士として、現場で働く方の実情についてもっと知りたいと考えて、期間工になりました。
期間工として働く前は、どのようなお仕事に就かれていましたか?
期間工の仕事を始める前は、理学療法士という、怪我や病気を負った方のリハビリをサポートする専門職として働いていました。
実は、期間工として働こうと思ったのも「理学療法士としての知見を深めたい」という思いがあったからなんです。
最近は理学療法士の市場が広がりつつあって、特に産業保健の領域で需要が高まってきていました。私もその領域に進もうと思ったのですが「その前に、現場で働いている方の実情を知っておいたほうが良いかもしれない」と考えまして。
そこで、体を使う製造業の仕事に実際に携わってみよう、と思ったのが期間工になったきっかけです。
トヨタ自動車の期間工として働こうと思ったきっかけは何でしょうか?
やはり、待遇の良さですね。本職を一度離れる以上、生活面がどうなるかわからないという不安があったので、少しでも待遇の良い現場を選びたいという思いがありました。
トヨタさんの工場は期間工のなかでも特に待遇が良く、給与も十分な額を貰うことができました。

期間工の仕事は想像よりも大変で、慣れるまでに時間がかかりました。
期間工として担当していた業務内容について、差し支えない範囲で教えてください。
自動車を組み立てるラインで、パーツを取り付ける担当をしていました。ベルトコンベヤーの上に車体の一部分が流れてくるので、それに対してパーツを一つひとつ取り付けていく、というのが基本的な流れです。
これを既定の台数分行うのですが、私が働いていた工場では1日に何百台分ものノルマがあったので、時間内に終えるのが大変でした。
実際に期間工として働き始めて、イメージとの違いなどはあったでしょうか?
正直に言うと「想像以上に大変な仕事だった……」と感じました。
自動車の製造ラインの業務であることは、事前にインターネットの求人情報を見て把握していました。なので、ある程度大変であろうことは想定していたのですが……いざ働き始めると、思っていた以上に体に負担がかかるなと実感しましたね。
私が担当していたのは、手を使ってパーツを組み立てるという工程だったので、慣れないうちは指や腕の疲労感や痛みなどに悩まされていました。
あとは、交代勤務もイメージ以上につらかったですね。
トヨタさんでは朝からの勤務と夕方からの勤務の2パターンがあって、1週間ごとで変わる制度となっています。この勤務時間の切り替わりにはしばらく慣れることができなくて、寝不足の日が続いたこともありました。
仕事に慣れるまでにはどの程度かかりましたか?
任された業務を1人でしっかりとこなせるようになるまでには、2か月ほどかかりました。
配属された当初は、本来自分に任される工程の一部分だけを担当することになります。そこから徐々に作業範囲が広がっていき、2か月経つころには独り立ちできた、という感じですね。
作業手順書があるので、どのパーツをどこにつければ良いのかは頭では理解できるのですが、実際にやってみるとうまくいかないことが多く……。手の使い方や体の動かし方などを少しずつ覚えながら、効率よく作業をこなしていくというのが、最初の2か月間は大変だったなと思います。
仕事に慣れてからの1日の流れを教えてください。
朝勤務のときは、6時半に出勤して朝礼に出席、そのあと約2時間組み立て作業を行って、8時半~9時のあいだに10分の休憩を取ります。休憩後はまた2時間作業して、大体10時半から45分のお昼休憩に入る、というのが基本的な流れですね。
お昼休憩以降は、1時間半作業して10分休憩する、というルーティンが続きます。これを3時まで繰り返したら定時なんですが、その日の分のノルマが終わっていなければ残業になります。ノルマの状況次第ですが、大体30~40分ほどは残業していました。
夕方勤務の場合も、業務の進め方は基本的に変わりません。業務開始が16時半からで、2時間の作業と10分休憩を繰り返して、20時半くらいから長めの休憩に入ります。その後は1時間半作業・10分休憩のセットを2回行って、24時半に所定の労働が終わる、という流れです。ただ、朝勤務のときと同様で基本的には残業があったので、職場を出るのは25時くらいになりますね。
残業はどの程度の頻度で発生していたでしょうか?
ほとんど毎日残業していたと思います。私の配属されていた工場はトヨタさんのなかでも人気の車種を製造していて、生産台数もほかと比べて多かったので、1日のノルマを達成するのが大変だったんです。
残業の有無とか1回当たりの時間は、同じトヨタさんであっても配属先の工場によって変わってきます。生産台数がそこまで多くない工場であれば残業が少ない場合もあるので、期間工は絶対に残業がある、というわけではないと思います。
夜遅くまで働いた経験がなく、生活リズムが整えられずに苦労しました。
交代勤務で一番大変だったことは何でしょうか?
これまでは、交代勤務はもちろん、夜遅い時間まで働くという経験もあまりなかったので、とにかくその生活に慣れるのに苦労しましたね。
夕方勤務のときは家に帰ってくるのが深夜になるので、そこから食事を摂ったりほかの家事をしたりすると、寝るのがほとんど朝方になってしまうんです。期間工になって初めのうちは、仕事の高揚感も合わさってなかなか寝つけず、寝不足の状態で翌日の勤務を迎える、ということも少なくありませんでした。
こうした状態がしばらく続いたのですが、2か月経つころには期間工としての生活リズムが整って、寝不足に悩むことは少なくなりました。
交代勤務が続くなかで健康維持のために気をつけていたことなどあるでしょうか?
期間工になる前は人並みにお酒を嗜(たしな)んでいたんですが、期間工として働いている期間は飲まなくなりました。夜遅くに帰ってきてお酒を飲んだら、次の日起きるのが難しくなってしまいますからね。
毎日同じ時間に寝るようにする、というのも意識していた点です。朝勤務の週であっても、翌週の夕方勤務に向けて体調を整えるために、寝る時間・起きる時間を決めていました。
こうした取り組みの甲斐があってか、眠気があって作業がつらいということはありましたが、体調をひどく崩すということはほとんどありませんでした。
反対に「交代勤務で良かった」と感じる場面などはありましたか?
市役所や郵便局に行きやすくなったのは、良かったところだと感じています。
公的機関とか病院って大体夕方には閉まってしまうので、日中働いている方だとなかなか行きづらいですよね。交代勤務の場合は、夕方からの勤務の週であれば出勤前に市役所や病院に行けるので、その点で困ることはあまりありませんでした。
期間工の仕事は大変ですが、それに見合うリターンがあるのは確かです。
待遇の良さからトヨタ自動車を選ばれたとのことですが、実際の収入についてはどのように感じましたか?
私が働いていたところでは月に額面で35万円ほど貰えていて、十分に期待通りだったと感じています。職場には20代の方も多くいらっしゃって、彼らも基本的には同じ額貰っていたのですが、年齢を考えるとかなりの好待遇だと言えるのではないでしょうか。
また、期間工では3か月、6か月といった区切りで「満了金」というものも貰えます。業績が好調であれば賞与が出ることもあるので、その場合はさらに収入が増えますね。
実際、期間工として働いていた時期には、それなりに貯金することができました。私は自宅から職場に通っていたので、家賃や光熱費などは自分で払っていましたが、寮に入ればそういった生活費も抑えられるので、さらに貯えを増やせると思います。
期間工の仕事はたしかに大変ですが、それに見合うだけのリターンはあるとは思うので、しっかりと稼ぎたいと考えている方にはおすすめです。
給与以外の待遇や制度で、良かったと感じたところはありましたか?
私が配属されていた工場に関しては、社員が自由に使えるジムが併設されていて、ありがたいなと感じていました。あと、社員食堂の料金は会社側が半分負担してくれていたので、昼食代はかなり抑えられましたね。こういったところも、トヨタという大きな会社の期間工になるメリットだと思います。
交代勤務を続けるのがつらくなり、契約満了前に退職することを決めました。
契約満了ではなく途中で退職されたのには、何かきっかけがありましたか?
一つのきっかけとしてあるのは、1週間ごとの交代勤務を続けるのがつらくなってしまった、という点です。
毎月の給与に加えて3か月ごとに貰える満了金があったので、しばらくのあいだは「とりあえず3か月は頑張ろう」とモチベーションを維持することができました。
しかし、ある程度慣れたとはいえ、勤務時間が変則的に変わるのはやはり負担が大きく、契約満了まで続けるのが難しいなと感じてしまいまして……。2年のタイミングで満了金が出るということもあり、そこがきりの良いタイミングかと思い退職することに決めました。
また、2年働いた段階で「理学療法士として現場で働く方の実情を知る」という当初の目的も大方達成できていたので、その意味でもタイミングとしては最適だったなと思っています。
退職すると決めたとき、不安や迷いはありましたか?
理学療法士の資格を持っていて、次の仕事も決まっている状況だったので、そこまで大きな不安はありませんでしたね。期間工として働いているうちから次の職場を探していたので、スムーズに新しい仕事を始めることができました。
配属先がオープンな職場だったので、人間関係の悩みはそれほどありませんでした。
期間工として働いて良かったと感じた点について教えてください。
収入面についてはこれまで話してきた通りですが、それ以外の部分で言うと、人間関係も悪くはなかったなと思います。
職場が比較的オープンな雰囲気で、上司も話しやすい方だったので、自分の意見や気持ちはしっかりと伝えられました。新入社員への声がけも多くて、体調について気にしてくれたり、慣れない作業での体の状況を慮ってくれたりしたので、安心して働けましたね。
ただ、これに関しては私の運が良かったという面があり、配属先によっては厳しく指導されることもあるようです。配属先は基本的に自分で選べないので、この点は期間工として働くにあたっての不安なポイントかもしれません。
もし配属先の雰囲気が自分に合わず、心身の不調が続くようであれば、まずは上司を通じて産業医の先生に相談することをおすすめします。また、上司を統括する部門がある場合には、そちらに意見を伝えても良いかもしれません。場合によっては配属先を変えてくれることもあります。
期間工として働く前にやっておいたほうが良いこと・知っておいたほうが良いことはありますか?
とにかく体を使う仕事なので体力づくりをしておくのと、体をケアするためのストレッチの方法などは知っておいたほうが良いと思います。
期間工の仕事には、指や手を使う作業があれば、腰を何度も曲げることになる作業もあります。自分に割り当てられた工程によって、負担がかかる体の部位は変わってくるので、それに合わせて適切にケアできるようにしておきたいですね。
期間工という働き方は、どんな人に向いていると思われますか?
割り当てられた仕事を黙々とこなせる人ですね。
期間工の業務は、基本的に同じことの繰り返しです。マニュアル通りに手を動かして、決められた時間内にノルマを達成する、というのが得意な人なら、期間工にも向いていると思います。
反対に「自分の好きなやり方で仕事をしたい」「自分のペースで作業を進めたい」という思いが強い人だと、期間工は長く続かないのではないでしょうか。私の周りでも、仕事内容が合わなくて1か月くらいで辞めてしまった方がいらっしゃいました。
期間工を目指すのであれば、仕事内容が自分に合っているかどうかを、一度きちんと考えてみるのが良いかもしれません。
自分自身で現場の仕事を経験したことで、実体験に基づいたアドバイスができるようになりました。
期間工として働いた経験は、今の理学療法士の仕事でどのように活きていますか?
リハビリ中の方に対してアドバイスする際には、期間工として働いた経験が活きているなと感じます。「どういう体の使い方をすると負担が増えるのか」という点を、自分自身で実感したことで、患者さんと同じ目線に立って予防の啓発をしたり、注意すべき点をアドバイスしたりできるようになりました。
それと、理学療法士の仕事に直接は関係ないのですが、「期間工として2年間頑張った!」という経験が、人生の糧になっているなとも感じています。この先困難に直面しても「あの2年間を越えられたんだから、今回も大丈夫」と思えるようになり、メンタル面で成長することができましたね。
もし過去に戻ったとして、もう一度期間工をなろうと思われますか?
おそらく、もう一度期間工になると思います。
交代勤務や手・指の痛みなど、つらい経験が数多くあった期間工ですが、給与や理学療法士としての知見など、それに見合ったリターンも得られました。それに、先ほどもお伝えした通り、つらい経験を乗り越えたからこそメンタル面で成長することもできました。
いずれにしても、人生の糧になることは確かなので、もし過去に戻ったとしてももう一度期間工として働き始めると思います。
最後に、これから期間工に応募される方に向けてアドバイスなどがあればお願いいたします。
とにかく体を大切にしましょう。期間工は健康な体があって成り立つ仕事ですから、体調を頻繁に崩したり、怪我をしたりすることがないようにしたいですね。
体のどこに・どれだけの負担がかかるのかは、任される工程次第で変わります。私の職場では、腱鞘炎になってしばらく休むことになった方や、作業時の姿勢が原因で腰を痛めてしまった方がいらっしゃいました。
どのような仕事を任されても良いように、健康的な生活習慣を維持し、ストレッチなどで体をケアできるようにしておくことをおすすめします。
